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2014.10.04 Saturday - comments(2)
9/27は徳島ヴォルティス vs 鹿島アントラーズの試合があった。場所は徳島の鳴門・大塚スポーツパークにあるポカリスエットスタジアムだ。前日26日、香川県の某所に電話をかけて、OKなら行く、NGならテレビ観戦しようと決めた。これはいわば賭けみたいなものだったが、電話の答えはOKだった。本来、往復ハガキで事前予約をしないと入ることのできない美術館で、何年も前からずっと行きたいと思っていた場所だった。「お一人でしたら大丈夫ですので、ぜひいらっしゃってください」と言ってくださった。こういうやり方は本来反則なのだが、以前金沢の某所でも当日時間ができたので電話をかけ、団体客の中に一人混ぜてもらったことがあった。断られて当然。今回もご好意に甘えてしまった。

仕事を一気に片付けて、新宿で用事を済ませ、旅の準備を始めたところ新しくまた仕事が入った。出発時間を遅らせて仕事に取りかかった。明るいうちには出発したかったので、ものすごい集中力を発揮して、夕暮れどきには自宅を出発した。

東京ICから名古屋を経由して、深夜神戸のホテルに到着した。もう少しがんばって、明石海峡大橋を夜のうちに渡って香川に宿泊することも考えたが、青空の淡路島も見たかったし、神戸に着いた頃にはさすがに体が重かった。夜の駐車場は一つだけ空きがあった。偶然にも同じFIAT500の隣だった。



試合当日、明石海峡大橋を渡って淡路島のサービスエリアでひと休み。このサービスエリアは日本でもTOP3に入るくらい、昼も夜もそこからの景色が美しくてつい叫びたくなる。四国に渡り、徳島のスタジアムへ行く前に香川県の志度ICで降りた。少し早く到着したので、四国八十八ヶ所の一つ、第86番札所志度寺へ立ち寄った。欲張ってあといくつかのお寺を回りたい欲求に駆られたが、御朱印をいただいて予約した美術館へと急いだ。ちなみに、この御朱印帳はいつだったか四国を訪れたときに購入したもので、まだ御朱印は2つ目だ。お寺の住職さんに「神社とお寺は違うから、御朱印帳も別々にしないといけませんよ」と言われるまで、その違いにすら気づいていなかった。だから、四国に行くときは必ず四国八十八ヶ所のための御朱印帳を持っていく。国内を旅するときは、神社の御朱印帳を必ずカバンに入れていく。お守り代わりだ。

夏のような暑さだった。私が長年行きたかった場所、イサムノグチ庭園美術館は、13:00からのガイドツアーに参加する方たちが自家用車やタクシーで少しづつ集まっていた。私のナンバーを二度見、三度見する人もいた。中は撮影禁止だったが、なんでも写真に収めようとする現代では、ゆっくり作品を見ることができて、その時間をいつもよりずっと濃密な時間を楽しむことができたように思う。イサムノグチが毎年自分の誕生日の頃に過ごした自邸は素晴らしい日本建築で、海外生活の長い彼のために、和室の中央部分にある畳が外され、土間になっていた。ちょうど畳に腰掛けて暮らせるような作りだ。玄関横にも、裏庭にも、年月とともに完成した作品があった。

9月の初め、札幌を訪れたときに大通り公園で見たイサムノグチの作品「ブラック・スライド・マントラ」が大好きだ。友人と札幌ドームでサッカー観戦したあと、すすきのでジンギスカンを食べ、ホテルに帰る前に暗闇に浮かぶ黒い作品を見た。「子どもの尻が作品を完成させる」というように、「ブラック・スライド・マントラ」は大きな石のすべり台で、滑ってなんぼの作品だ。友だちが「早く帰ろうよ〜」と促す中、そそくさとすべり台の階段を駆け上がって、マントラを滑り降りた。感激だった!

その「ブラック・スライド・マントラ」の小さな石膏模型がアトリエの中にあった。今そこでイサムノグチが作っているような空気さえ感じられたのは、アトリエの中にたくさんの道具がそのまま残されていたからだ。石垣で囲われたアトリエには、無数の作品が保存されていて、完成されたものには「I.N」のサインが彫ってあった。雨風を凌ぐために蔵の中にもたくさんの作品が残されていた。中でも高さ約3.6m、重さ17tという巨大な「エナジー・ヴォイド」は圧巻だった。作品の前にベンチがあったので、少しの時間をそこで過ごした。「地球を彫刻したい」というイサムノグチの言葉が、この作品を前にして少し理解できた。

裏山の石段を登ると、小さな丘があった。かわいらしい曲線を描いた丘をさらに登っていくと、瀬戸内海が見えた。美しい場所だった。丘からアトリエ近くまで小石が線でつながっていた。下に行くほど石は巨大になっていく。枯山水を表現している作品だという。ユーカリの木はサンフランシスコから持ってきたもので、2本のうち1本は枯れてしまったそう。残った1本は驚くほどの大木に育っていた。

その丘がとても美しかったので、美術館員の方に「この丘はもともとこんな形をしていたんですか?」と尋ねると、砂を盛って作ったのだそう。イサムノグチがデザインした曲線を形にした丘だった。素朴な疑問、イサムノグチは自らクレーンやユンボを操縦できたのか?スタッフの方がちょっと笑いながら、「もちろんそれは別の方がやるんです」と教えてくれた。イサムノグチの作品は見るからに重そうだから、いつも気になっていたのだ。多くのアーティストが孤独の中で作品を生み出すように、この美術館でもまたそれを感じた。



あと一つか二つ、近くに四国八十八ヶ所の札所があるらしい。がんばれば行けるか?無謀か?第85番札所八栗寺へと向かう五剣山のふもとへと急いだが、そこからケーブルカーに乗らないといけないらしい。「上までどのくらいかかりますかー?」と車の中から声を張り上げると、15分に一度、5分ほどで到着するという。一瞬、行こうかと思ったが、ケーブルカーに乗ってしまえば、肝心の試合に間に合わない可能性が出てくる。後ろ髪引かれる思いで山を後にした。

気づけば香川に来たというのに、うどんを食べていない。山のふもとに続々と車が入っていくうどん屋さんを見つけて、私も人の流れに乗った。佇まいが素晴らしい山田家というお店で、日本庭園を眺めながらうどんを食べ、夜泊まるホテルを予約した。偶然辿り着いたお店が、讃岐うどんの老舗だとあとから知ってラッキー!と思ったのも束の間、東京スカイツリーソラマチにもお店があることを知った。


さあ、いよいよ徳島のスタジアムへ。車を走らせていると、滋賀ナンバーのアントラーズ車を見かけた。追い越しながら運転席を覗くと、運転手も助手席の人も赤いユニフォームを着ていて、車の背後には無数のアントラーズステッカーが貼られていた。鹿島からこんなに遠く離れたところにも仲間がいることにジーン!ときてちょっと視界が曇ってしまった。こんなふうにして、たった90分の試合を見るために、全国から仲間が集まってくるのはとても愉快だ。そして、スタジアムが見えてくると、その数は次第に増えてきた。私も赤いユニフォームに着替えて、青いユニフォームをかき分けて堂々とスタジアムに入った。

一人の観戦は心細い。ビジター自由席(アウェイ応援席)の入り口を探してスタジアムを一周していると、「鈴木さん!」と呼ぶ声がした。福島からやってきたサポーターのKさんだった。こんなふうに、知り合いに出会えるとホッとする。アウェイ席は既にいっぱいで座る場所が見つからず、前方の端っこの方で試合を待った。

1点目が決まった瞬間から、チャントはよりボリュームを増した。2点目が決まって、前の人たちと次々とハイタッチをした。3点目、今度は後ろの人たちともタッチ。4点目、そして5点目が決まって、アントラーズが完封勝利した。試合終了後、すぐに「オブラディ・オブラダ」が始まった。みんなで肩を組んで歌うのだ。勝ってオブラディをやって帰る、というのがなによりの楽しみだというのに、隣の人はカメラに夢中になっていた。慌てて一つ上の段へ移動して、試合中に一際大きな声で応援していたみんなと喜びを分かち合った。

それから渋滞を抜けて高速に乗り、お気に入りの淡路サービスエリアに立ち寄った。フードコートはほとんどが赤いユニフォームを着たサポーターで埋め尽くされていた。私の大好きな夜景を眺めるべく、人混みを避けて外に出ようとしたときに、さっき試合で活躍していたアントラーズの選手と遭遇して、思わず「こんにちは!」と声をかけた。私にとっては知っている人でも、あちらからすれば、ただのサポーターだ。でも、うれしかったから思わず声が出てしまった。この選手にはなぜかよく遭遇する。その都度つい「お疲れさま」というより先に「こんにちは!」と言ってしまう。

日付が変わった頃、京都のホテルに到着した。そんなふうにして、自分の誕生日を盛大に演出した上に、アントラーズが勝ってこともあって、これ以上はない!という1日になった。本当のところ、誕生日に部屋で一人、テレビ観戦するのは淋しかったのだ。

京都では長年お世話になっているアランジアロンゾの担当者さんと1日町を歩きながら、いろんな話をした。一緒においしいものを食べ、一緒に電車に乗って、日差しを避けて歩いた。こうして旅先で誰かと過ごせる日曜日をしあわせに思う。結局、お寺を観光することはなかったけれど、京都を出発してすぐ、サイドミラー越しに見た夕焼けと山並みがとても美しくて、また来ようと思えた。旅はやり残したことがあると、次の楽しみになる。

深夜、東京の自宅に帰宅。1413kmを走った。


友だちが柴崎選手のサインをプレゼントしてくれた!ありがとう!
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COMMENT
marble - 2014/10/04 3:07 PM
飛行機は楽だけど、たまにこういうバカみたいな旅もいいものです(笑)。
いつもはおしゃべりしてるうちに着いちゃうから、一人ドライブはちょっと修行みたいでした。
junko - 2014/10/04 3:00 PM
楽しそうです(&#10048;'&#65078;'&#10048;)本当はご一緒したかった・・・(´&#8226;ω&#8226;&#805;`)
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