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タクシー
2014.09.24 Wednesday - comments(0)


大学時代のことは黒歴史として認識しているので、あまり思い出したくない。上京したばかりで失敗も多かった。ワールドカップ初戦、コートジボワール戦が終わって背後から声を掛けられたときは一瞬凍った。私の黒歴史を全部知っている同級生、Nくんだった!まさかのブラジルで17年ぶりの再開となった。

ワールドカップ開催中は、大体どこへ行っても日本人サポーターに遭遇した。試合のスケジュールが同じだから当然だ。Nくんも同時期にリオデジャネイロにいて、なんとなく待ち合わせて一緒にフラメンゴのクラブハウスへ行き、イパネマの名店で食事をした。それから夜のコパカバーナを裸足で歩いて、ファベーラの明かりを眺め、さらにもう一軒ハシゴして、カイピリーニャを飲んだ。

「旅先で一杯やるのが何よりの楽しみ」というNくんは次第に呂律が回らなくなり、ウトウトし出したので引き上げることにした。彼は4年に一度のワールドカップに全力を注ぐ人で、だいぶ奮発してコパカバーナ沿いのすごくいいホテルに泊まっていた。一方、私はというとセントロ近くの安宿に泊まっていた。
Nくんのホテル1泊分が、私の1週間の滞在費だ。

無事送り届けた後、初老の運転手に安宿の住所を伝えた。運転席に沈むように座るその運転手は、フロントガラスから外の景色が見えるか心配になるほど座高が低かった。振り返って「かしまこまりました、セニョリータ」とゆっくり丁寧に言うと、そっとアクセルを踏んだ。

夜のリオデジャネイロを海岸に沿って走る。ただし、赤信号はぶっちぎる。いくつもの赤信号を無視する度に心臓がふわっと軽くなる思いだった。赤信号でも注意して進むというのは、ブラジルでは至って普通のようだ。カイピリーニャが程よくまわった体には爽快すぎた。

ブラジルで楽しかったことを思い出すとき、必ずこのときのことが浮かぶ。赤信号を駆け抜ける感覚と、
小さい運転手のおじいさん。ついでに言うと、ブラジルは危険だとさんざん言われていたし、細心の注意を払って生活していたけれど、タクシーに限って言えば多めに払おうとしても「そんなにいらないよ」と返金する運転手がほとんどだった。ぼったくろうとする人には一度も遭遇しなかった。私はただ運がよかっただけなのか。

ブラジル一人旅で夜遊びは絶対にできないし、やるまいと決めていたが、思いがけず大学時代の友人と再会したことで、ブラジルの夜の楽しみを知ることができた。なにせNくんは体が大きいので、用心棒としてはもってこいだった。ふと我に返ると、日本代表は3試合を戦ってもうブラジルにはいないというのに、私はここで何をやっているのだろう
という思いがつきまとった。


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