a small,good thing
EURO2016
2016.07.10 Sunday - comments(1)

パリに到着してすぐ、鹿島アントラーズの1stステージ優勝を知った。ホテルにチェックインすると、トランクから赤いユニフォームを取り出し、浮き足だって町に出た。


4年に一度のEUROは、ヨーロッパ最強国を決める大会で、今年はフランス国内10都市が会場になっている。だから大会期間中、サポーターはフランス国中を飛行機や電車を駆使して移動する。ブラジルワールドカップのときも、そんなふうにして出発から帰国まで17フライトを乗り継いだ。ブラジルに比べたら、フランスはだいぶ難易度が低い。ただ、テロに対する厳戒態勢の様子はニュースでも知っていたから、今回の旅はいつも以上に気を引き締めて出かけることになった。


私が取っていた試合のチケットは、パリ、マルセイユ、ボルドーの3都市、Round 16とQuater Finalということで、どの試合もチケットを買う時は対戦国が決まっていなかった。パリ・サンドニの試合は、グループリーグを勝ち上がってきたイタリアvsスペインに決まった。どちらも優勝候補で、これはもう決勝戦みたいなカードだ。偶然、取っていたチケットとはいえ、このカードが決まった時は思わず声が出てしまった。サンドニというパリ郊外の町で、8万人の歓声に包まれるスタジアムを想像した。


マルセイユは2013年の冬に一度訪れた。その時に見学したかったスタッド・ヴェロドロームは、このEURO開催に向けて工事中だった。3年後、EUROで必ずこの町にまた来よう、完成したスタジアムで観戦しようと決めていた。ここでのカードは、ポルトガルvsポーランド。人並みだけれど、Cロナウド、レヴァンドフスキの活躍を期待した。


ヌヴォー・スタッド・ドゥ・ボルドーは、このEUROのために新しく作られたとても美しいスタジアムだ。森をイメージしたという無数の柱と、フラットな屋根の直線が印象的だ。パリとマルセイユは行ったことがあるけれど、ボルドーは名前しか知らない。世界遺産のその町を、一度見てみたかった。そして、ボルドーでぜひボルドーワインを飲みたいと企んでいた。

このボルドーで試合を見た翌日に帰国する。最後のカードは、サンドニでの試合を勝ち上がったイタリアとドイツに決まった。私が見たかったドイツ代表!

 

パリに着いてすぐ、メトロでエッフェル塔へ向かった。FAN ZONEの会場が近くなるにつれて、サッカーファンが増えていく。だけど、私の赤いユニフォームには誰も目もくれない。23番植田選手のユニフォームを着ていたので、時々背後から「ウエダ!」と声がする度に、笑顔で振り返った。大スクリーンでウェールズvs北アイルランドを見ながら、シャンパンを飲んだ。鹿島アントラーズ、1stステージ優勝おめでとう。

 

夜、ホテルに戻ってから初めてパリを訪れた日のことを思い出していた。あれは2002年、14年前のことだ。休みもなく働いて働いて、仕事する手を止めたら死ぬんじゃないかという強迫観念さえ感じていた頃だ。体もボロボロだったし、心が病んでいた。早朝、シャルル・ド・ゴール空港に到着して、朝靄の中をロワシーバスでオペラ座まで。初めてのヨーロッパ、バスの中で震えていた。

 

この日、あのときと同じロワシーバスに乗った。14年が経って、私はもう震えたりしない。年を取ってサッカーが好きになって、サッカーの町で暮らしているとか、そんな未来が待っているなんて想像もしなかった。

 

1606 EURO2016 FRANCE
ゴッドハンド
2016.06.24 Friday - comments(4)

久しぶりに書こうとしたら、自分の置かれている環境が大きく大きく変わっていた。この変化に自分自身がついて行けていない。

 

1/27、引っ越しをしたら家が未完成だった。壁紙も貼っていなければ、コンセントもない。つまり真冬にエアコンが使えないどころか、仕事も生活も完全NGという有り様だった。トイレが部屋の真ん中にドーンと置いてある。水も出ない。キッチンなどの住設機器も設置どころか発注すらしていない状況だった。とにかく、工務店と建築家に対して言いたいことは山ほどあったけど、この日から私はホテル暮らしを強いられた。

 

この辺は、鹿島臨海工業地帯といって、約160の企業が集中している。そのこともあって、ホテルというホテルは軒並み満室に近い。工事がまだまだ続くと聞いて、2ヶ月ほどマンスリーマンションにでも住まなきゃいけないのかと覚悟を決めて電話をすると、入居率100%という驚異的人気エリアだと知って撃沈した。

 

日々、空室のあるホテルを探し回っては転々として、精神的にも肉体的にも消耗していった。2月上旬には、遂に体を壊して救急車の世話になった。工事中、覚悟を決めて家に住むようになってからも、毎日家の周囲には職人さんたちの車が10台近く集まっていて、仕事どころか生活すらままならなかった。仕事机の横では、けたたましい音を立てて溶接をしている。養生したビニールの中で、らせん階段を削ったりペンキを塗ったりしているのだ。

 

そんなふうにして完成した鹿嶋の家は、3/30にひとまず完成となった。6/24現在、まだ室内ドアの鍵が設置されていない箇所があって、ドアに穴が空いている。私はもう怒る気力もなくなく、工務店からの連絡をずっと待っている。

 

 

今日はそんなことを書こうと思ってこのページを開いたわけではない。明日から久しぶりに旅に出るので、なんとなくまた書き綴りたいなと思ったのだった。私の体は積もり積もったあれこれによってだいぶ悲鳴をあげている。30分ほど歩いただけで腰に激痛が走るという状況で、果たして飛行機に乗れるのか?自分の荷物を持って歩けるのか?あらゆる不安があったものの、この町には「ゴッドハンド」の先生がいるからと安心していた。この先生の手にかかれば、どんな人でもあっという間に痛みは去り、長年の苦痛から解放されるのであった。「鈴木さんも一回行ってみて」と紹介してくれたのは、鹿島アントラーズの選手だった。彼だけでなく、アントラーズの選手たちはみんなこの先生にお世話になっているというし、ジーコもキングカズこと三浦知良選手もここに通っていたという。待合室の座敷には、一際目立つサインがあった。元巨人の清原のサインだった。「残念なことになっちまってなあ」と先生は言った。


旅に出る前に、ゴッドハンドの先生のところで体をメンテしてもらおうと思っていたところ、先生が階段から落ちて骨折してしまったと聞いた。今月は治療は無理だという。大ピンチだった。目が覚めると痛みに気づく。立っていても痛いし、座るともっと痛い。とにかく、居ても立っても居られない痛みは、ストレッチすらできないほどで、もう自分の手には負えなかった。

 

 

鹿嶋から東京へはバスで90分〜120分ほどだ。今でも時々東京を訪れる。杉並区に長く住んでいたので、買い物といえば新宿だった。だから自然と今でも新宿へと足を運んでしまう。そこで、カイロプラクティックの先生にすべてを託すことにした。先生にはとにかく「歩けるようにしてください」とお願いした。整体、マッサージ、鍼、クラニオセイクラル、アーユルヴェーダ、あらゆる治療がある中で、様々な方法を試してきたけれど、今回カイロプラクティックを選択したのは、骨格のバランスが滅茶苦茶になっていることを自分で把握していたからだ。筋肉のバランスも悪い。それは、日々の仕事の姿勢も原因していると思う。腰への負担を軽減させるために、体全体のバランスが崩れ、普段から首が傾いていた。今まで通っていた杉並区内のカイロは、施術に物足りなさを感じていた。それで、今回新しい先生を頼ることにした。旅の出発まで時間がなかったから、一種の賭のようなものだった。

 

先生は私の話を一度も否定することなく、すべて聞いた上でつま先から頭まで時間をかけて調整してくれた。すべてが終わったあとで、骨格模型を使って私の体が今どんな状態になっているのかを、わかりやすく説明してくれた。骨盤が寝ている状況で、左側が上がっている。さらに、マウスを持つ右側の骨盤が前に出ている。体全体でバランスを取ろうとして、首が右に傾いている上に、頭全体がねじれていた。それでようやく痛みの原因を知った。

 

「今まで固まっていた筋肉を緩めたので、2〜3日はちょっと注意してくれださい」と言われた通り、それから2〜3日は腰の激痛に耐えていた。失礼ながら先生を疑ったりもした。ところが、しばらく経って痛みはほとんど消えた。2回目の施術では「腰の方はだいぶ良くなっていて、問題は首の方。今回は首に痛みが出るかもしれない」と言って、念入りに首のメンテナンスをしてもらった。メキメキと妙な音が脳みそに響く。

 

今、随分と長い間、左腰の奥の方にあった「何か」をほとんど感じなくなっている。体をひねると激痛が走ることももうない。こういう体のことは、施術方法や先生との相性も大事だ。私は、ギリギリのところで西新宿整体院の三上先生と出会えて、幸運だった。顎関節症の治療もあれこれ試してみたけど、結局この整体院で全身の施術をしてもらった後、気づいたら口がきちんと開くようになった。耳の前に手を当てて、顎が左右同時に開くように意識して口を開けたり閉じたりしてみる。どんなにやっても、顎が片方ずつ開いていたのが、今は同時に開いている。これはちょっと感動するほどだった。右の顎に至っては、開く度にバキッ!という音が鳴って煩わしかったが、長年のその「音」が今のところなくなっている。

 

若いときは、1日10時間歩いても全然平気だった。年齢を重ねて、今までのような旅ができなくなるのが恐いと思うようになってきた。今回で最後かもしれないなと思いながら、EURO2016フランス大会を見に行く。

1606 EURO2016 FRANCE
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