ドイツ行きは急遽決めたので、ガイドブックがない。でも、ドイツは何度も訪れているし、なんとかなるだろうと空港から電車に乗ってデュッセルドルフ中央駅へ向かっていた。日本人が多く暮らすデュッセルドルフ、車内でも日本語が聞こえる。今日宿泊予定のホテルを確認しておこうとiPhoneをチェックすると、なんと予約日が11/27ではなく、1ヶ月後の12/27になっている! ということは、今日泊まる宿がない!
イギリスではプリペイドSIMカードがあったのでネットも使えたけど、ここドイツではネットもつながらない。今日泊まるホテルを探す術がない! 駅構内のインフォメーションに聞くと、ホテルのことはツーリストインフォメーションで聞いてくれと言う。慌てていたから気づかなかったけど、日本でいう「みどりの窓口」で「今日ホテルはありますか?」と聞いてしまったらしい。駅員さんの「なぜ俺に聞く?」という表情も納得だ。駅を出てようやくツーリストインフォメーションに辿り着いたら、人はいるのに鍵がかかっていた。窓越しに中のスタッフに「開けて!」と訴えるものの、首を横に振るだけ。18:00をほんの5分過ぎただけなのに! ドイツは厳しい。
こうなったら、困ったときのHOTEL IBISだ。駅に隣接しているというより、駅の中にあるような好立地ゆえに料金は安くない。ミラノへは寝台列車で行くので、無駄なく移動できるように、明日の一泊だけIBISを予約していた。なんとか今日と明日、連泊させてもらおう。
IBISのフロントで空室を聞くと、あっさり「満室です」と即答されて絶望的になった。今まではそれで引き下がったけれど、私も旅を続けている間に多少強くなった。立ち去るスタッフの背中に向かって「予約してあります!明日だけど!」「今日も泊めて!お願い!」と声をかけた。絶望的な顔で。諦めずにしつこく聞くと、しばらく待った後「空室あるよ」との返事が。どうして最初に「ない」と言ったのか。そんなことはもうどうでもいい。とにかく、部屋を確保できて安堵した。
いきなり打ちのめされた気分だった。部屋番号は「111」、手書きの数字を読解するのに少し時間がかかった。地下の暗い廊下を進み、カードキーを差し込むもののドアは開かない。10分以上試してそれでも開かず、通りすがりの人に開け方を聞いた。どうやら重いドアは開けるときにコツがいるらしく、ドアノブをちょっと手前に引いてから力尽くで下げるらしい。部屋にはポットも冷蔵庫もアメニティもない。隣りの話し声は筒抜け。ネットは別途1日7ユーロなので、ロビーの微弱な無料Wi-Fiを拾って仕事の続きをする。料金に納得いったのは唯一、大きなベッドど清潔な布団くらいだ。日本のビジネスホテルはつくづく優秀だと思う。
地図がないまま町へ出るのは、いつもならたまらなくワクワクすることだけど、今日ばかりは疲労も限界で、まるで余裕がなかった。歩いて歩いて歩いて、迷いに迷って帰ってくる途中、広場で小さなクリスマス・マーケットをやっていて、ホットドッグやホットワインなどで夜ごはんにした。ベッドに寝転んだら、体が沼に沈んでいくようだった。