アアルト自邸の玄関前にガイドツアーに関するインフォメーションがあった。日本語でも書かれていて「時間になったらガイドが来るので、ピンポンは押さないで」とある。建物の脇から庭へ回って、外観を眺めたりしながら時間が来るのを待っていると、中から女性が現れて中へ通してくれた。なんと今日のガイドツアー、最初で最後ただ一人のお客だという。シーズンオフとはいえ、なんとも淋しい。
約1時間、マンツーマンで英語を聞くのは厳しいなと思いながらもツアーは始まってしまった。私の語学力は相変わらずで、話していることの半分以上は理解不能であった。10分ほど経ってからピンポンが鳴って、カップルと日本人女性がツアーに加わった。これでマンツーマンから解放されて少し気が楽になった。すべての説明が終わると、カップルは早々に帰って行った。3人組だと思っていたら、日本人女性は一人旅の最中だった。
1936年竣工とは思えないほど古さを感じないモダンな建築。アアルトのアイデア溢れる家は、とても居心地がよかった。ユトレヒトにあるシュレーダー邸や、金沢にある忍者寺に行ったときも思ったが、いつか家を建てる時は真似したい!と思えるものでいっぱいだった。
THE AALTO HOUSEhttp://www.alvaraalto.fi/aaltohouse.htmリビングへと続くドアは引き戸になっている。ダイニングの食器棚もどこか日本的というか昭和っぽい雰囲気だった。素材に竹を使ったものなど、あちこちに日本の影響が見受けられて親しみを覚えた。
広すぎず、狭すぎず。住みたいと思わせる家。
日当たりのいい窓辺のスペースがアアルトの特等席。窓の外には、さっき行きすぎてしまった道路とグラウンドが見えた。「北欧の建築家は西日を大事にする」と聞いたことがある。暗い冬、家の中を温かいオレンジに染める西日は貴重なのだろう。
アアルトの書斎。カーテンレールの上から伸びるライトもアアルトがデザインしたもの。この部屋に小さなハシゴが掛けてあって、その先に小さなドアが。どうやら2Fのテラスに抜けられるようになっていて、仕事に煮詰まる度にこのドアを開けていたのだそう。
2Fのバスルームのシンクがぽってりとしたかわいいフォルムで、同じのが2つ並んでいた。もちろんこれもアアルトがデザインしたもの。イメージを形にできることはなんて素晴らしいんだろうと思う。頭上を見上げると、まん丸の穴が開いている。ここから月明かりが差し込むのだ。
2Fのリビング。
奥さまの寝室にあるドレッサー。独創的な形のランプが目を引く。
テラスに面したゲストルーム。ベッドが高くなっているのは、下に階段があるため。