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ウィーン発ブダペスト行きの電車はしんみりとしていて、なんだか上野発の東北行き列車の雰囲気に似ていた。窓の外はほとんど灯りもなく、シベリア鉄道での果てしない移動を思い出した。さよなら、オーストリア。
ブダペストの年季の入った地下鉄は、前にも書いたように世界遺産だ。たった3時間移動しただけで、現代から昭和初期にタイムスリップしたような気分だった。大都会ウィーンと東欧ブダペストは物価も3倍は違うし、共産主義時代の独特のにおいというか、明らかな空気の違いがおもしろい。ブダペストはファッションもダサイが、それもまたよい。
アパートの冷蔵庫にそのままにしていたトカイワインとオリーブをぼんやり食べながら、丸2日間のウィーン滞在を思い返した。ウィーンを訪れるまで、あんなに都会だとは思っていなかった。アートと建築、音楽や舞台、全然時間が足りなかった。貧乏性ゆえに欲張ってスケジュールを詰め込みすぎてしまったが、それでもオペラ座やシェーンブルン宮殿、フンデルトヴァッサーのゴミ処理場も行けなかった。そして、ベルリンへ行ったあたりからずっと咳が止まらないというのに、無理してワインを飲んでさらに咳き込んでいるのは、帰国までに飲みきってしまいたいという、これまた貧乏性ゆえの理由からだった。