屋久島の温泉事情。
■楠川温泉
白谷雲水峡から帰ってすぐ、民宿からほど近い楠川温泉に行った。小さいながらも休憩所もあって、いいお風呂だった。帰りに商店に立ち寄って牛乳一気のみ。
■湯泊温泉
屋久島発、鹿児島行きの最終便に乗るまでの時間、島を一周した。ガイドさんお勧めの尾之間温泉へ行くつもりが、途中にあるいくつかの温泉を素通りできなかった。男女混浴のお風呂は、誰もいなかった。近くにいたおばちゃんに「ここの温泉はバスタオルを巻いて入ってもいいんでしょうか」と聞いたら、少し奥に歩いていくと小さいお風呂があって、そこは混浴だけどバスタオルしたままでも大丈夫だという。
お風呂発見!誰もいない海のお風呂で、前日の縄文杉の疲れを癒す。ぬるめのいい温泉!と、優雅な時間を邪魔するかのように電話が鳴った。「不動産屋のものですが、弟さんの家賃が5ヶ月分たまっておりまして、一度お姉さんに来ていただけないかと思いまして」「あのー、オレだけど。すみません。お金貸してください」───屋久島でこんな話、聞きたくないわい。
うなだれているところへ若い男の子がやってきて「ご一緒させてもらってもいいですか」と聞く。断る理由もないので快く返事をしたものの、見知らぬ人といきなり裸の付き合いというのは、間が持たないというかなんというか。見えてます、とも言えいえないので見えてないふりをしつつ、そそくさと温泉をあとにした。
■平内海中温泉
湯泊温泉のそばにあって、海の水が引いた時にだけ入れる温泉。干潮は1日2回。真っ昼間か夜中、タイミングが合えば温泉が出現して入れるらしい。煙草を吸いながらぼんやりしているおじさんに「温泉はどこですか?」と聞くと、いろいろ親切に教えてくれた。
・意外と知られていないけど、女性はバスタオルを巻いて入ってもいい
・お湯はものすごく熱いので、ホースの水でぬるめるといい
・転がっている洗面器は使ってもいい
・着替えるのはあの辺の岩陰
・シャンプーするときはこの辺で洗えば、泡が温泉に入らない
近くにある民宿のおばさん「今なら誰もいないから、女の人でも大丈夫よ」
海中温泉のあれこれを教えてくれた地元のおじさん。10メートル以上はあろうかというホースをひっぱって、恐ろしく熱い温泉をぬるめてくれた。
海中温泉は、熱湯コマーシャル並みの熱さだった(入ったことないけど)。次第に人がやってきて、あっという間におじさんだらけになってしまった。
湯上がりに地元のおじさんと立ち話をした。屋久島には、いい人もいれば残念ながら悪い人もいるらしい。この海中温泉でも、女性に対して「バスタオルは禁止だ!取りなさい!」と言っては、裸を鑑賞する趣味を持ったおじさんがいるとか。こういう人が民宿を経営していたりするので、注意しないと大変なことになるらしい。
この民宿の経営者は4回の逮捕歴があるホンモノの変態だとか。何度逮捕されようと、民宿の名前を変えては何度でも女性客を狙う。昨日の夜も、2人の女性客を連れて深夜の海中温泉に一緒に入っていたとか。ある時は、「縄文杉まで疲れたでしょう」と言っては女性客にだけ特別マッサージ。地元では有名な変態オヤジ、観光客がそんな評判を知るわけがない。
今回、私が泊まった民宿は、多分屋久島で2番目に泊まってはいけない宿だった。屋久島観光協会のサイトで見つけた民宿だったけれど、レンタカー屋さんも、近くのごはん屋さんでも、民宿の名前を言うと言葉を失うほど。あるごはん屋さんでは「あそこはよっぽど泊まるところがないときに、しょうがなく泊まるところですよ」「あそこのお客さんはよくうちにごはんを食べに来るんですよ、前に来た人なんか、料理からノミが出てきたって言ってましたよ」───よりによって、どうしてそんなところに泊まってしまったんだろう!
とにかく食事が絶句するほどまずかった。ハッキリ言う!まずかった!見事に全部冷えていて、食器もなにもかも不衛生だった。手を拭いたウェットティッシュでちょっと畳を拭いたら真っ黒になるほど、部屋も最悪だった。廊下の向かいでは、民宿のおばちゃんとおじさんが晩酌しながら延々お笑い番組を見ては大笑いしていて、眠れもしないし、朝早くから無意味に起こされたりで、東京に帰って自分の家に着いた時はとてもホッとした。余った部屋を貸すだけでお金をもらおうなんて、それだけで民宿なんてやっちゃダメだ!
去年、沖縄の民宿生活で人間らしさを取り戻したように、今回も食堂でみんなで「いただきます」をやりたかった。全国のあちこちから集まってきた人同士で、夜な夜なお酒を飲んだり、おしゃべりしたり、夕日を見に行ったり、そういう自然な交流を楽しみにしていただけに、この観光シーズンに自分以外のお客さんが誰もいない民宿での時間はとても残念だった。本当に、どうしてあの民宿を選んでしまったんだろう!
そんなわけで、最終日は温泉三昧で、民宿のあの独特のにおいとか、嫌なものを全部洗い流した。